U草百五十兆円なり二百兆円なりが郵貯に集まって、どういう形で資金の供給になるかというと、いわゆるいったん形式のうえでは大蔵省の資金運用部に預託され、資金運用部から日本開発銀行や日本輸出入銀行等の公的金融機関に融資され、道路公団等の事業実施機関に融資される。
公的金融機関が民間経済主体に資金を融通することで、郵貯に入ったマネーは市場に還流してきます。
郵政省と大蔵省というのは預託金利の水準をめぐってよく争いますが、郵政省は全国の特定郵便局の持つ勢力、影響力が絶大であること、大蔵省は資金配分先である公的金融機関が最重要の天下り先であることから、郵貯の民営化については基本的にはそろって反対の立場をとるという運命共同体という面も持っています。
日本銀行はどうかというと、古い日本銀行法というのがあって、日本銀行の人事権を基本的には大蔵大臣が握っているわけです。
そういった意味では、発言が制約される。
ドイツとまではいかないまでも、金融政策の独立性を高める必要性があると思うし、人事権を含めて日本銀行の独立性もはからなければならないのです。
こういう意味で、大きな権益を包含している財政投融資の仕組みも、そもそも論と経済効果からいえば、民営化を含めた再検討の段階にさしかかっているといえます。
ただそのさいにも現在の郵貯が、全国の津々浦々まで良質のサービスを提供して、国民の公益を実現しているという事実は十分に尊重されなければならないでしょう。
H谷川郵貯と簡易保険は絶対に民営化しないとまずい。
個人貯蓄のなかに占める比重がきわめて高いわけで、両方合わせると実体的にはほぼ五〇パーセント近くを占めるような状況になっている。
これだけの巨額の個人貯蓄を、中途で吸いとって金融市場にまわさないということになれば、いわゆる金融市場の調節機能を日本銀行に期待すること自体、実体に合わないことになってしまう。
そんな状態に達してしまったら、あとは郵便局そのものを解体、あるいは民営化するという方法しかないのではないか。
先ほども申し上げましたが、日本の場合、たとえば金融の自由化を金融業界だけの問題としてとらえたら、決定的に方向が見えなくなります。
とくに国営の金融機関と、意外に大きな問題は農業関連の金融機関、農協です。
無視することはできません。
これらがばらばらに分離してしまって、銀行は銀行、証券は証券というふうに考えるのは、大蔵省を含めた各省庁のたてわり行政の反映みたいなものです。
もう少し民間は自由な立場から、お金というひとつの財の流れを捉えるという趣旨でやらずに、農協の預金も郵便貯金も銀行預金も、預金という形態にかわりはないという発想をとったらおしまいなのです。
そこのところをしっかり押さえておかないと、金融の自由化の真相を掴むことはできない。
行政主導の自由化になってしまう。
それでは外国から見て、市場の開放、あるいは自由化ということを日本がやっていないといふうに思われてもしょうがないわけです。
行政主導の自由化であれば、外国は自由化とは認めません。
外国人の判断、国際的な基準からいえば、自由化とは行政の制約を排除することです。
この辺を相当しっかり見ておかないと、まずいだろうという感じがしますね。
こういう形でやっていくと、いつまでたっても国際標準化していかない。
金利の自由化にしても、銀行間にレート差が出ても当たり前なのに、差が出ると、大蔵省がモニタリングしていて、「お宅の銀行はなぜこんなレートを出すのか」ということになる。
証券行政といってもいろんな分野があって、多数の個人投資家を扱う分野では、ある意味では許可制度が必要かもしれない。
一方、ホールセール(大口取引き)だけのインベストメント・バンキング部門とか、引受けとか、機関投資家への販売の部門は、登録制でいいとも考えられる。
規制や余計な制約が少ない方がいいというのをベースにおいて、必要なところを整備していくという発想が抑えられ、問題があるたびに余計にがんじがらめになっていく傾向が強いわけです。
H谷川今の証券の話にしても、問題なのは、先物と現物相場との開きを利用して利益を稼ぐアビトラージというのがどんどん出てくることです。
しかも外国の証券会社はアビトラージのテクニックを非常に早い時期から開発して十分慣れているから、たとえば株価が下がりはじめたときに、活用してうまくヘッジするノウハウを身につけている。
それに対して日本の証券会社では、そこまでできる人間はいない。
まして機関投資家にもいない。
だから値下がりのリスクを、そのままもかぶらなければならない。
また不祥事を生む、というパターンなのです。
大蔵省は先物市場を開設したときに、「アビトラージをやってよろしい。
やるべきである」ということを行政的にいったかというと、一回もいったことがない。
業界にいわせれば、そんなことはできないと思っていた。
ところが法律的には、できないことはないのですね。
平気でやるべきだったということを、あとになってから知るわけです。
こんなのはいちばんいい例です。
もうひとつの大きな問題は、自由化に対する考え方と非常に密接につながります。
たとえば東証の会員権を、外国の証券会社や地方の証券業者に開放した。
その貴重な東証の会員権を、外国証券は平気で返上して撤退していくわけです。
日本の証券会社にしてみれば、こんなことは考えられない。
「東証の会員権を返上するなんて、冗談か」ということになる。
日本側からいわせれば、たとえばイギリスの証券会社などが、サッチャー首相を動かしてまで会員権を開放しろといっておきながら、儲からなくなったからといって「はい、さようなら」はないだろうというわけです。
こういうズレがある。
意外に日本側の事情を外国が理解できない、また外国側のインテンションを日本側が理解しにくい、ひとつの典型かもしれません。
こういうとき、日本の役所、あるいは役所の発想にならされた日本人の考えでいえば、サッチャーなんてなんだということになる。
ご都合主義ではないか、ポリシーなんかあるU草バブルの崩壊にともなう企業の問題がいろいろ出てきましたが、日本企業は悪魔の集団だというような扱いも多かった。
ところが日本というのは、世界中の国々をいくつかの類型に分類していくと、戦後の民主化の成果でもありますが、これだけ国民の均質性というか縦の平等、個人の格差が小さい社会というのはきわめて珍しいのです。
ョ−ロッパでは、支配階級と非支配階級というのが目に見えない形で依然として温存されています。
政治を動かしているのは少数の権力者です。
権力者の意向に従って政治が動のか、という発想につながっていく。
間違いでして、やはりその時々の状況しだいで、業界から要請があれば受けて立ってはじめてビジネスが成立するというのが、国際的な基準でしょう。
その辺が日本側にはよくわかっていないのですね。
それと比べると日本というのは、きわめて公平性の保たれた社会だと思います。
企業そのものも、海外の企業に比べれば、きわめてピュアな存在です。
リーガルマインドを踏み越えていった行動とか暴力団とのつながりとかは糾弾されるべき問題です。
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